地方での子育て移住

地方移住を成功させたITエンジニアが語る「仕事探しの軸」：年収？働き方？子育て環境？優先順位の決め方

都市部で働くITエンジニアの皆様の中には、長時間労働や満員電車、待機児童問題などから「もっと家族と過ごす時間を持ちたい」「子育てしやすい環境に移住したい」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。地方移住は、これらの課題を解決する有効な選択肢となり得ますが、同時に「地方でITエンジニアの仕事はあるのだろうか」「キャリアは維持できるのだろうか」といった仕事に関する不安を抱える方も少なくありません。

地方での仕事探しは、都市部での転職活動とは異なる側面が多くあります。求人数や企業規模の違い、働き方の多様性など、事前に知っておくべきリアルがあります。そして、移住後の生活を豊かなものにするためには、ご自身やご家族にとって何が大切かを見極め、「仕事探しの軸」をしっかり持つことが非常に重要になります。

この記事では、実際に地方移住を成功させたITエンジニアの経験談や知見を基に、地方での仕事探しのリアルと、後悔しないための「仕事探しの軸」の持ち方、優先順位の決め方について詳しく解説します。移住を具体的に検討する際の判断材料として、ぜひお役立てください。

なぜ地方移住における「仕事探しの軸」が重要なのか

都市部に比べて地方はIT関連企業の絶対数が少なく、求人情報も限られている場合があります。また、リモートワーク可能な職種が増えたとはいえ、全ての地方に希望する働き方が見つかるわけではありません。そうした状況の中で、ご自身のキャリアやライフスタイルに合わない仕事を安易に選んでしまうと、「こんなはずではなかった」と後悔に繋がる可能性があります。

移住を成功させた方々に共通するのは、「何のために移住するのか」「移住後の生活で何を最も大切にしたいのか」という明確な目的意識と、それを実現するための「仕事探しの軸」を持っていた点です。軸があることで、限られた情報の中から自分に合った仕事を見つけやすくなり、また、複数の選択肢で迷った際の判断基準となります。

ITエンジニアのための「仕事探しの軸」候補

地方での仕事探しにおいて、どのような点を「軸」として考えるべきでしょうか。ITエンジニアという専門性を持つ方が特に考慮すべき軸をいくつかご紹介します。

• 年収・待遇 地方の企業は、都市部の企業に比べて平均年収が低い傾向にあると言われます。しかし、これはあくまで平均であり、企業の規模や業種、ご自身のスキルや経験によっては、都市部と遜色ない、あるいはそれ以上の待遇を得られる可能性もあります。重要なのは、「移住後の生活コスト」と「希望するライフスタイル」を踏まえて、必要な年収レベルを見極めることです。地方は都市部に比べて家賃や物価が低い傾向にあるため、額面の年収が下がっても、可処分所得や生活の豊かさが向上するケースも多く見られます。移住先の地域の平均的な生活費や、ご自身の家庭の支出を具体的にシミュレーションし、必要な収入を把握することが最初のステップです。

• 働き方（リモートワーク、フレックスタイムなど） ITエンジニアにとって、リモートワークの可否は重要な軸の一つです。地方移住と同時にフルリモートの仕事に転職することで、場所に縛られない働き方を実現し、通勤時間を削減して家族との時間を増やすことができます。また、部分的なリモートワークやフレックスタイム制度があるかどうかも、子育てとの両立を考える上で重要な要素となります。求人情報だけでは分からない働き方の柔軟性については、企業のウェブサイトや口コミ、可能であれば面接時などに具体的に質問することが推奨されます。

• キャリアパス・成長機会 地方では、都市部の大規模な組織と比較して、専門分野が限定的であったり、最新技術に触れる機会が少ないのではないか、といった懸念があるかもしれません。しかし、地域によっては特定の産業が盛んで専門性を深められたり、地域課題をITで解決するプロジェクトに携わったりと、都市部とは異なるキャリアパスや成長機会が存在します。また、リモートワークを活用して都市部の企業で働きつつ、地域の勉強会やコミュニティに参加することで、キャリアの幅を広げている方もいらっしゃいます。ご自身が今後どのようなエンジニアになりたいか、どのようなスキルを身につけたいかを明確にし、それに合った機会が得られるかを検討することが重要です。

• 仕事内容・やりがい どのような仕事内容にやりがいを感じるかも大切な軸です。大手企業の開発プロジェクトの一部を担う仕事、地域密着型企業のシステム開発・運用、スタートアップでの新規サービス開発、あるいはフリーランスとして複数のプロジェクトに関わるなど、地方にも多様な働き方があります。地域によっては、一次産業や観光業など、これまで関わったことのない分野のシステムに関わることで、新しい視点ややりがいを見出す可能性もあります。ご自身のスキルや経験を活かしつつ、何に貢献したいのか、どんな課題を解決したいのか、といった視点で仕事内容を検討することも有効です。

• 企業文化・人間関係 働く上で、企業の文化や職場の人間関係は非常に重要です。特に地方の企業は、良くも悪くも地域との繋がりが強かったり、アットホームな雰囲気であったりすることがあります。ご自身がどのような環境で力を発揮できるか、どのような人間関係を望むかを考慮し、可能であれば会社の雰囲気を感じ取れるような情報収集（ウェブサイト、SNS、知人の紹介など）を行うことをおすすめします。

子育て環境や暮らしやすさと仕事のバランス

地方移住の大きな目的の一つに「子育て環境の向上」があります。仕事探しの軸を考える際には、必ず子育て環境や移住後の暮らしやすさも同時に考慮する必要があります。

例えば、 * 仕事の通勤時間と、保育園や学童の送迎時間を両立できるか * 残業の頻度や休日出勤の有無は、家族との時間を確保する上で問題ないか * 移住先の自治体の子育て支援制度（保育料、医療費助成、各種手当など）は、仕事と両立する上で魅力的か * 夫婦で移住する場合、それぞれの仕事と、家事・育児の分担をどのように実現するか

といった視点が必要です。理想の仕事を見つけても、子育てや生活とのバランスが取れなければ、移住の目的を達成することは難しくなります。仕事と子育て、暮らし全体のバランスをどのように取るか、ご家族とじっくり話し合うことが大切です。

優先順位の決め方と情報収集

複数の軸がある中で、どのように優先順位を決めれば良いでしょうか。

1. 自己分析と家族との話し合い: まずは、ご自身が「これだけは譲れない」という条件を明確にしましょう。年収なのか、働き方なのか、仕事内容なのか。そして、ご家族（特に配偶者）と率直に話し合い、それぞれの希望や不安、優先したいことを共有してください。家族全員で「移住によって実現したいこと」をすり合わせることが、後悔のない移住には不可欠です。

2. 情報収集と軸の検証: 自己分析と家族の話し合いで仮の軸ができたら、その軸に合う移住先や仕事があるかを具体的に情報収集します。求人サイトだけでなく、移住先の自治体のウェブサイト、移住相談窓口、オンラインでの移住フェア、SNSなどを活用しましょう。可能であれば、実際にその地域に移住したITエンジニアの方や、現地の企業で働く方に話を聞く「OB/OG訪問」も非常に有効です。情報収集を進める中で、最初に考えた軸が現実的でないと分かったり、新しい魅力的な選択肢が見つかったりすることもあります。情報は常にアップデートし、軸も柔軟に見直していく姿勢が大切です。

移住を成功させたITエンジニアの中には、「年収は少し下がったが、リモートワークで通勤時間がなくなり、子どもの寝顔を見る時間が増えたことで幸福度が格段に上がった」という方や、「地域密着型のIT企業で、これまでの開発スキルを活かしつつ、経営層に近い立場で地域ビジネスのデジタル化支援に携わることに大きなやりがいを感じている」という方もいらっしゃいます。また、「フリーランスとして複数のリモート案件をこなしつつ、地域のITボランティアにも参加することで、収入と社会貢献を両立させている」といった多様な働き方を実現している例もあります。これらの事例は、仕事の軸を柔軟に設定し、自身のスキルと地域のニーズをうまく組み合わせることで、地方でも充実したキャリアを築ける可能性を示唆しています。

まとめ

地方移住を成功させるためには、移住の目的を明確にし、特にITエンジニアとしてのキャリアをどのように継続・発展させていくかを具体的に描くことが不可欠です。そして、そのためには「仕事探しの軸」をしっかり持つことが非常に重要となります。

年収、働き方、キャリアパス、仕事内容、企業文化など、様々な軸を考慮しつつ、ご自身とご家族にとって何が最も大切かを話し合い、優先順位を決めましょう。そして、その軸を基に、多様な方法で情報収集を行い、現実的な選択肢を探していくプロセスが、後悔のない地方移住への第一歩となります。

この記事が、都市部からの地方移住を検討されているITエンジニアの皆様にとって、ご自身にとって最適な仕事を見つけるための「軸」を見つけるヒントとなれば幸いです。